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Misc  Hello,dark place

僕は今とても気分がいい。
ずいぶん久しぶりにこの場所に来ている気がする。最後にきたのはいつだったかな。
もうかれこれ1年半ぐらいここには足を踏み入れていなかったように思える。
すぐそこにあるはずなのに僕はどうしてもその扉を開ける事ができなかったんだな。
もしかしたら昨日までは扉すら見えていなかったのかもしれない。



この一年半、僕はそれなりに忙しく仕事をさせてもらい、
それなりの充実感を得て、それなりに幸せな生活を僕は送っているはずだった。
仕事におけるスキルもそれなりに身につけてきただろう。
ただその反面、どこかに何かを置き忘れてきたという感覚がどうしても拭えないでいた。
精神が乖離していく様をまるで他人事のように僕は遠くから眺めているしかなかった。

この場所を思い出すきっかけになったのは
村上春樹に関する記事を読んだときだったと思う。

僕は夜9時に寝て、朝4時か5時に起きて、3、4時間ほど書きます。早朝に起きて心の中の「地下室」までおりていくんです。そのあと、太陽のもとでジョギングをする。もう、25、6年走っている。暗さと明るさのバランスをとるんです。ダークプレイスに行くためには、肉体的にタフでないといけません。そこから帰ってくるには強くないといけないんです。強くなければ帰ってこれなくなってしまう。僕は「創作(make up)」しているのではなく、ダークプレイスで「観察(observe)」しているのです。心の奥底にあるダークプレイスまでに深く入っていくのは、危険で恐ろしいことです。世の中にはそこまで降りていかない人もいますよ。でも本当に、真剣に、何かをしようと思ったら、そこへ行かなくてはならない。

心の中の地下室。ダークプレイス。
この記事を読んだ後、僕はその場所を知っているような思いにかられた。
村上春樹が言うほどの深い場所ではなかったにせよ
扉のある場所だけは知っていたはずだった、と。

その後、もちろん僕はすぐにはそこにたどり着く事などできるはずがなかった。
原因は簡単だ。僕はそこが”なんであるか”を忘れてしまっていたのだ。
仕事で他人の本質を見極め、形にすることはあっても、自身を形成する事など無いから。
他の人はどうかは知らないが、少なくとも僕の中にあるその場所と社会のシステムが働いている場所はあまりにも離れた場所にあると思う。

紆余曲折あったとは言わないが、
いずれにせよ僕はまたその扉を見つけ、中に入る事ができた。
今日、今、この場所に立てているのはとても幸運なことだと思う。
誰でも立つことができる場所ではあるけれど、誰もが足を踏み入れたいと思う場所ではないから。
ここには痛みがあり、深い闇がある。
痛みに耐えられなかったり、少しでもバランスを崩してしまうとうまく戻ってこられない。
僕には村上春樹が長い間その作業を続けているという話を読んだ時正直ぞっとした。
でも僕はそこに足を踏み入れないわけにはいかない。そんな気がする。

デザイナーとアーティストの垣根がなくなってきたと言われているが、
この言葉の背景にはその場所に足を踏み入れたことがあるかどうかが深く関わってきていると思う。
社会のシステムがそういう方向に向かっているのではなく、己の内側にベクトルを向ける人が増えてきたということではないだろうか。(あるいはそうあってほしいという僕の願望かもしれない)

最後に従兄弟が書いていた言葉をここに書いておきたい。

オリジナリティって人がやってないところにあるんじゃなくて自分の中にあるもんで、人と違う事をしたからといってそれはオリジナリティじゃないと思う。

 2008年11月20日 15:41   |